ある家の炊飯ジャーの気持ち

 

私は

とてもおいしくご飯を炊きます

 

私を買ってくれたこの家のご主人は

私を愛おしくみつめて

そして私を選んでくれました

おいしいおいしいご飯を食べさせたくて

はりきっていたのに

 

この家に来てから何か月も箱に入ったまんま

 

私を使ってくれたら

絶対によろこんで貰えるのに

必ずおいしいって言って貰えるのに

私にはそのチャンスがない

 

 

ついつい

自分にはどんな魅力が足りないのだろうと考えてしまいます

自分にどんな欠点があるのだろう

もっといいものが他の炊飯ジャーにあるのかしら

悪いところばかりが気になります

 

 

私は働きたい

あの人においしいご飯をたべてもらいたい

ちゃんと食事をとっていつも健やかでいて欲しい

私を手にしてくれたときのあの人の手はとても温かかったから

 

 

私に魅力がないわけではない

きっと魅力的なはずだ

 

 

だけどそれを

今は必要とされていない

 

あの人が今は必要としていないだけ

 

 

今は

変わらずに待っていよう

おいしくご飯を炊ける炊飯ジャーとして

魅力を思い出してくれるまで

私は変わらずに待つことにしよう

 

 

 

そのタイミングが訪れるのを待つ

 

 

 

いつかスイッチを入れてもらった時に

一生懸命ご飯を炊く

愛情いっぱいのご飯を

 

 

 

やっぱり買ってよかった~

本当においしいご飯だ~

と喜んでもらえるといいな

 

その時

誰かと一緒に笑い合っていたら

もっとすてきだ